結論からお伝えします
親が認知症であっても、実家を売ることはできます。ただし、認知症の程度によって手続きが大きく変わります。判断能力が軽度であれば本人の意思確認のもとで売却できますが、重度になると「成年後見制度」という法的な仕組みを経由しなければ売買契約を結ぶことができません。
この記事では、認知症の親が所有する実家を売る際に何が起きるのか、どんな手続きが必要なのかを、法制度の背景から順を追って整理します。
親が認知症であっても、実家を売ることはできます。ただし、認知症の程度によって手続きが大きく変わります。判断能力が軽度であれば本人の意思確認のもとで売却できますが、重度になると「成年後見制度」という法的な仕組みを経由しなければ売買契約を結ぶことができません。
この記事では、認知症の親が所有する実家を売る際に何が起きるのか、どんな手続きが必要なのかを、法制度の背景から順を追って整理します。
## なぜ認知症になると家が売れなくなるのか
不動産の売買は「契約行為」です。契約が法的に有効であるためには、契約を結ぶ本人に「意思能力」があることが前提となります。意思能力とは、自分の行為の意味と結果を理解したうえで判断できる能力のことです。
2020年施行の改正民法では、意思能力を欠く状態で行った契約は無効とされています(民法第3条の2)。重度の認知症の方が「売ります」と署名をしても、その契約は後から無効を主張できる状態になります。買い手側もリスクを負うことになるため、現実には取引が成立しません。
一方、軽度の認知症であれば、契約締結時点で意思能力があると医師が判断できれば、本人の署名のもとで売却を進めることが可能です。ただし、後からトラブルになるリスクを避けるために、契約日直前に「意思能力の確認」を行った記録を残すことが実務上は非常に重要です。
## 成年後見制度とは何か
意思能力が失われている、あるいは不安定な状態にある方の財産を守り、法的行為を代行するための制度が「成年後見制度」です。大きく3つの類型があります。
**補助**:判断能力が不十分ながらも一定程度残っている段階。補助人が特定の行為についてのみ同意・代理権を持ちます。
**保佐**:判断能力が著しく不十分な段階。重要な財産行為(不動産の売却など)については保佐人の同意が必要です。
**後見**:判断能力を欠く状態。成年後見人が財産管理のほぼすべてを代理します。
実家の売却に関係するのは主に「後見」と「保佐」です。いずれも家庭裁判所への申立が必要で、愛知県の場合は名古屋家庭裁判所豊田支部(豊田市周辺)または岡崎支部(岡崎市周辺)が管轄になります。
## 申立から売却許可まで、実際にかかる時間
成年後見の申立から後見人選任まで、平均的には2〜4ヶ月かかります。書類の準備、医師の鑑定(場合によっては省略可能)、裁判所の審理を経て、後見人が選任されます。
しかしそれだけでは不動産の売却はできません。本人が住んでいた、あるいは住んでいた可能性のある「居住用不動産」を売却する場合、後見人であっても家庭裁判所の別途「売却許可」が必要になります(民法859条の3)。この許可申請に、さらに1〜2ヶ月かかるのが一般的です。
つまり、成年後見の申立から実家の売却実現まで、順調に進んでも4〜6ヶ月は見ておく必要があります。介護施設の費用が急迫している場合など、時間的な余裕がないケースでは、早めに動き始めることが肝心です。
## 任意後見という選択肢
親がまだ判断能力のある段階なら、「任意後見契約」を検討する価値があります。任意後見とは、将来判断能力が低下したときに備えて、信頼できる人(子や弁護士など)に代理権を与えておく契約です。公証役場で公正証書として締結します。
法定後見(裁判所が後見人を選ぶ)と比べると、誰に代理を頼むかを本人が事前に決められる点が大きなメリットです。また、将来への不安が形になるため、「実家をどうするか」を親子間で話し合うきっかけにもなります。
親の判断能力が疑わしくなりはじめたと感じたら、まず医師に状況を確認し、判断能力が残っているうちに任意後見を結んでおくことを検討してください。
## 豊田市・岡崎市での実情
豊田市や岡崎市では、市街化調整区域に実家が立つケースも多く、売却自体に一定の時間がかかります。成年後見の手続きと並行して、売却の見通し(売れる価格・売れる時期)を把握しておかないと、後見が完了した時点で「やはり売れなかった」という結果になりかねません。
後見の手続きを進めながら、並行して地域の不動産市況を確認しておく。そのためには、制度の知識と地域の実情を両方把握している担当者に早い段階で相談しておくことが重要です。
私は豊田市と岡崎市を中心に活動する不動産エージェントとして、こうした相談を一人で受けています。弁護士や司法書士との連携が必要な局面では適切にご紹介しますが、「何から始めればいいか」という入口の整理から一緒に考えることができます。
## 整理:認知症の親の実家を売るための確認事項
- 親の判断能力の現状(医師の診断をもとに確認) - 法定後見か任意後見か、どちらが適切かを判断する - 家庭裁判所への申立書類の準備(戸籍謄本・診断書・財産目録など) - 居住用不動産売却の場合は家庭裁判所の許可申請が別途必要 - 売却のタイミングと後見手続きの進行を並行して管理する
認知症の親を持つ方が不動産売却を検討する際、多くの方が「こんな状況で相談できるのだろうか」と感じています。ですが、こうした状況こそ、早めに動き始めることで選択肢が広がります。焦る必要はありませんが、知っておくことで、必要なときに正しく動けます。
親の状況を整理したあとの売却の全手順については、豊田市で相続した不動産を売却する全手順・岡崎市で相続した不動産を売却する全手順の全手順ガイドをご覧ください。