「あのエリアは難しいですよ」
最初の業者はそう言った。豊田市の山間部に近い実家。築40年。祖父が建てた家だった。父が亡くなり、相続した私は「売れるもの」だと思っていた。
2社目も同じことを言った。3社目は査定にすら来なかった。
「田舎の家は売れない」——気づけばそれが、私の中の「事実」になっていた。
「あのエリアは難しいですよ」
最初の業者はそう言った。豊田市の山間部に近い実家。築40年。祖父が建てた家だった。父が亡くなり、相続した私は「売れるもの」だと思っていた。
2社目も同じことを言った。3社目は査定にすら来なかった。
「田舎の家は売れない」——気づけばそれが、私の中の「事実」になっていた。
それから3年、実家はそのままだった。
年に2〜3回、草刈りのために豊田市まで足を運んだ。往復2時間。汗だくで作業をして、夕方に帰る。固定資産税は毎年払い続けた。近所から「あそこ、もう空き家なの?」と聞かれることもあった。
「売れない」と思っていたから、何も動かなかった。
でも、3年間で費やしたお金と時間を計算したとき、私は少し立ち止まった。固定資産税だけで60万円以上。交通費と手間も合わせれば相当な額になる。「売れない」と諦めているあいだにも、コストは積み上がっていた。
ある知人の紹介で、地元を拠点にしているエージェントと話した。
彼は実家のある地区を知っていた。どんな山道があるか、近隣にどんな人が住んでいるか、地域の歴史的な背景まで話してくれた。
「このエリア、移住希望者の問い合わせが増えてきてますよ」と言われた。
「でも3社に断られて」と言うと、「大手は動かないエリアです。でも買い手がいないとは違う。届け方の問題だと思います」と言われた。
彼が説明したのは、移住希望者や古民家に関心のある層へのアプローチだった。大手が使う一般的な不動産ポータルではなく、移住支援サイトや自治体との連携も視野に入れると話していた。
「価格は下げる必要があるかもしれません。ただ、売れないとは思っていません」
その言葉が引っかかった。3年間、「売れない」を前提に動いてきた私には、驚きだった。
結果を保証するものではないと彼は言った。「ただ、今のまま維持し続けるコストと、動いた場合のコストを比べてみてください。どちらが合理的か、一緒に考えましょう」
私は初めて、「売れないかもしれない」ではなく「売れる方法があるかもしれない」という前提で実家のことを考えた。
「もう少し話を進めたい」と思った。
3社に断られた事実は変わらない。でも、「断られた=売れない」ではなかった。
彼らは「自分たちには難しい」と言っただけだった。それを私はいつの間にか「世の中に買い手がいない」と受け取っていた。
「売れない」という思い込みが、3年間の私を止めていた。
この記事は、過去にご相談いただいたお客様の実体験をもとに、物語調に編集したものです。同じような気持ちを抱えている方に、「悩んでいるのは自分だけじゃない」と感じていただけたら、それだけで書いた甲斐があります。
売れると分かったそのときのために——具体的な売却の全手順を豊田市で相続した不動産を売却する全手順・岡崎市で相続した不動産を売却する全手順に整理しています。